文字式とは、その名の通り、数字の代わりに文字($x$ や $a$ など)を使って数量の関係を表した式のことです。小学校で使った $\square$ や $\triangle$ の発展形と考えると分かりやすいかもしれません。
例えば、「1個120円のりんごを $x$ 個買ったときの代金」を考えてみましょう。もし $x$ が $3$ なら $120 \times 3$、$5$ なら $120 \times 5$ ですね。これを一般的に表すと $120 \times x$ となります。これが文字式です。
なぜ文字を使うのでしょうか?それは、具体的な数字が決まっていなくても、数量の関係性を一般的な形で表現できるからです。これにより、問題を整理し、複雑な関係をシンプルに捉えることができるようになります。文字式は、数学の言葉であり、科学や経済学、プログラミングなど、様々な分野で使われる非常に強力なツールなのです。
文字式をスムーズに扱うために、いくつかの書き方のルールがあります。これは世界共通のルールなので、しっかり覚えておきましょう。
$(x+y) \div 3 = \frac{x+y}{3}$
「代数学」を意味する英語 "algebra" は、アラビア語の "al-jabr"(アル=ジャブル)に由来します。これは「壊れたものを元に戻す」「移項する」といった意味を持つ言葉です。9世紀ペルシャの数学者アル=フワーリズミーが書いた本のタイトルに含まれており、この本がヨーロッパに伝わったことで、代数学が大きく発展しました。この功績から、彼は「代数学の父」の一人と呼ばれることもあります。
文字式では、足し算や引き算ができる項とできない項があります。計算の鍵となるのが「同類項(どうるいこう)」です。
同類項とは、文字の部分がまったく同じ項のことです。例えば、$3x$ と $5x$ は、どちらも文字の部分が $x$ なので同類項です。しかし、$2x$ と $2y$ は文字が違うので同類項ではありません。$4a$ と $4a^2$ も、次数(文字を掛けた個数)が違うため同類項ではありません。
同類項は、係数(文字の前にある数字)を足したり引いたりして、一つの項にまとめることができます。
$3x + 5x = (3+5)x = 8x$
$7a - 2b - 4a + 6b = (7-4)a + (-2+6)b = 3a + 4b$
このように、式の中から同類項を見つけてまとめることを「式を簡潔にする」と言います。
文字式の中の文字に、具体的な数字を当てはめることを「代入(だいにゅう)」といい、代入して計算した結果を「式の値(しきのあたい)」と呼びます。
例えば、文字式 $5x - 3$ があるとします。ここで、$x=2$ のときの式の値を求めてみましょう。
$5 \times 2 - 3$
$10 - 3 = 7$
したがって、$x=2$ のとき、$5x-3$ の式の値は $7$ となります。代入は、公式を使って具体的な値を求めるときなど、様々な場面で活用される重要な操作です。
方程式などで「未知数(わからない数)」を表すのになぜ $x$ がよく使われるのでしょうか?これには諸説あります。一説には、フランスの哲学者であり数学者でもあるルネ・デカルトが、その著書の中で未知数をアルファベットの最後の方の文字($x, y, z$)、既知数を最初の方の文字($a, b, c$)で表したのが始まりとされています。また、活版印刷の時代、あまり使われない文字である $x$ の活字が余りがちだったため、印刷業者が積極的に使ったという話もあります。
実は、文字式の考え方は現代のテクノロジーに欠かせません。特にコンピュータのプログラミングでは、「変数(へんすう)」というものが使われます。これは、文字式の文字と同じように、様々なデータ(数値や文字列など)を入れておくための「名前付きの箱」のようなものです。例えば、ゲームキャラクターの体力や得点を記録したり、ユーザーが入力した名前を保存したりするのに変数が使われます。プログラミングは、まさにこの変数を様々に計算・操作することで成り立っているのです。
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